自賠責保険は、正式には自動車損害賠償責任保険といい、交通事故被害者の補償を目的に、自動車損害賠償補償法により車を保有する者全てに対しその加入が義務付けられた保険です。もっとも、その補償内容は最低限の範囲に留まる為、現在の交通事故事情等現状にそぐわず、また多くの問題を抱えています。
自賠責保険は強制加入の保険
自賠責保険は、自動車損害賠償補償法に基づき、車を保有する者全てに対しその加入が義務付けられた対人保険で、任意保険に対し強制保険とも言われています。この自賠責保険制度は1955年より開始され、交通事故の被害者補償を図ることを目的としています。
そのシステムは、原則として交通事故の遭った被害者は、加害者を介すことなく請求制度により、支払基準によって最低限の損害賠償金を直接得ることができます。そして、被害者の救済補償である為、交通事故により負傷すれば被害者として扱われますが、過失割合が70%を超える場合には重過失があるとして損害賠償金が減額され、100%であれば支払はありません。また、その保険金の上限額は最低限の補償を図るものであることから非常に低く設定されています。
自賠責保険の内容と現状
自賠責保険の具体的な内容は、まず車を保有する側では、政令により定められた保険料を支払うことで加入することができ、その保険料に関しては普通車や軽自動車、バイクなど車種と保険期間ごとに分けて設定されています。
そして、その補償内容は、被害者が死亡した場合には1人につき保険金3000万円まで、後遺障害は障害の程度に応じて75万~3000万円(要介護の重度後遺障害がある場合には4000万円まで)、傷害は120万円までの補償が定められています。
これに対し現状では、制度が施行された当初よりも車両の大型化や交通のスピード化が進み、現在の交通事故被害の事情に保障内容がそぐわないケースが多く、また保険料未払いや不正請求の多発など制度として多くの問題を抱えています。
自賠責保険の現在的な問題点
自賠責保険の現在的問題点は、最低限の対人保険制度であることから、被害者に対する保険金の上限が低く、被害者は自賠責保険だけでは十分な補償が受けられず、その一方で加害者となり得る多くの自動車保有者は自賠責の他に任意保険に加入し、万が一の事故に備え2つの保険への加入を迫られています。
そして、保険料の未払いも多く発生しており無保険車も現実としてあり、またひき逃げ事故では加害者が特定できない為、これらの場合には被害者に対し国が加害者に代りその賠償金を立て替えて支払われますが、立替えた賠償金が回収できないと云う問題も現状としてあります。
また、保険請求する側では、医療機関よりも治療期間の長い特に接骨院などからの請求が増え、中には不正請求も多発する問題を抱えています。